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Archive for 2010年6月

BPMの新しい動き、ケースマネージメントとは

2010年6月28日 コメントをどうぞ

最近、BPM業界では急速に「ケースマネージメント」の適用技術が論じられるようになった。しかし、日本国内では未だ馴染みのない用語だ。そこでケースマネージメントの考え方、動向を紹介したい。

 

ケースマネージメントとは

ケース・マネージメントとは、特定事案(Case)に対する行動計画、適切な実行者のアサイン、行動記録、進捗管理など、一連の管理サイクルを現場レベルで行う概念で、定型ビジネス・プロセスの枠組みに非定型ビジネス・プロセスをサブセットとして連携させ弾力的に業務運用可能にする。図1の例ではケース・マネージメントは、「アドホック、混迷、無秩序な人的活動」のビジネスプロセスをサポートし、これまでのBPM管理概念の領域であった「構造化された人的活動」(ヒューマンセントリック・プロセス)および「システム中心プロセス」(システムセントリック or インテグレーションセントリック・プロセス)を補完する。

 

図1.ダイナミックBPMプラットフォームの台頭

3つの作業領域

現在、標準化が進んでいない中、次の15のBPMツールベンダーが何らかのケースマネージメント機能に取り組んでいる。

  • Singularity
  • Cordys
  • Global 360
  • Sword (旧Graham Technology)
  • Itensil
  • TIBCO
  • EMC Documentum
  • IBM (FileNet)
  • BizAgi
  • Pallas Athena
  • Pega
  • Polymita
  • HandySoft
  • Fujitsu Interstage
  • Oracle

 

定型ビジネスプロセスにダイナミック・プロセスを組み込む富士通製品

その一例として、富士通は図1の概念の一部を自社製品のInterstage BPMで昨年秋に実現している。Interstage BPM V11では、あらかじめ定義したワークフロー内のタスクを現場レベルでさらに詳細なタスクに動的に分割定義、改変でき(taskingという)、進捗管理も可能なダイナミックなBPM機能を備えた。この製品は、「定型プロセス→非定型プロセス→定型プロセスに戻る」といったシームレスなプロセス間連携を提供するのでビジネス・プロセス管理にプロジェクト管理機能を加えた新しい使い方が可能だ。

図2.富士通のダイナミックBPM

富士通のプロセスアウトライン

富士通のダイナミックプロセスの作成

 

ダイナミックプロセスのサポートで現場オペレーションはどう変わるか

ビジネスプロセスに素早い変化対応力が求めらた場合、プロセスモデリングに立ち戻り、分析→設計→実装→実行のパスを上流から段階的に進める方式では遅い場合がある。また、ナレッジワーカーの混沌とした事案対応手順をその都度現場レベルで定義し作業管理したい場合がある。

このようにプロセスを現場レベルでダイナミックに定義、ないし変更できるBPM技術は2点ある。1点目は、ビジネスルールエンジンの利用だ。何らかのビジネスルールが変化した場合、ルールベースに保存しているビジネスルールを即刻変更しビジネスプロセスのフロー制御条件を変える手だ。しかし、この方法はルールのパターンをワークフロー上にあらかじめ定義しておく必要があり、事前定義型プロセスモデリングアプローチだ。2点目は、ケースマネージメントの利用で、実行時にプロセスの実行手順(タスク)を事案ごとに定義することだ。これは事後定義型プロセスモデリングアプローチと言えるものだ。

図3は、双方ともBPMプロジェクトでプロセス再設計、実装、配備といった大がかりな手順を踏まなくても、現場主体で変化対応できる姿を表している。
ただし、現場のオペレーションでルールを定義したり、タスクを定義する作業が必要になり、業務現場の管理者、担当者に「変化対応マインド」がなければ、この技術は生かされないだろう。

 

図3.素早い変化対応力のある動的業務オペレーション環境

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当ブログで最近紹介したガートナー2010年以降5つのBPM予測の中で、ダイナミックBPM適用により現場業務がどう変わるか次のように予測している。

    • 2012年までに
      企業が直面する20%のプロセスは、BPM技術の支援を受けながら、ナレッジワーカー自身が彼らの要求と好みに応じジャストインタイムでそのプロセスを自己変更できるようになるだろう。
    • 2013年までに
      ダイナミック BPM の導入は、増大するカオス的業務プロセスに効率を求める企業の緊急命題になるだろう。
    • 2014年までに
      グローバル2000企業のビジネス管理者、ナレッジワーカーの40%が広範囲に可視化されたビジネスプロセスモデルを日々の作業で使うだろう。2009年は6%に過ぎなかった。

 

ダイナミック・プロセスのBPMN適用を模索するOMG

OMGは2009年9月にポストBPMN 2.0の主題としてCase Management Process Modeling(CMPM)の仕様提案(RFP)の募集を開始した。BPMN標準に非定型ビジネス・プロセスの可視性を追加する考えだ。このRFPの冒頭に仕様策定の狙いが次のように述べられている。

RFPの目的

本RFPは、ケースマネージメント・プロセスを支援するためのBPMN 2.0メタモデルの拡張提案を求めるものである。ケースマネージメントは、プロセスの実行毎にそれぞれ異なる特定の状況あるいは情勢(ケースという)とそのケースに対する要求成果を持ち、それぞれのケースは、要求成果を達成するサブジェクト(人、訴訟問題、保険請求など)とそれに関連し執行した行動を含む。

ケースマネージメント・プロセスは、デジタル化された知識ベースとして、過去のケースと行動履歴、および現在のケース状況を記録したケースファイルを持ち、そのファイルは複数の文書、あるいは補足的な参照情報の記録から構成される。ケースファイルは意思決定者に助言、気づき、制約、計画支援を提供し、意思決定者はそれをよりどころに、関連する事実を熟考し関連する行動を追跡することになる。

ケースマネージメント・プロセスの自動化は、

  • 過去のケース履歴から特定事案のベストプラクティスを学習可能にし、業務遂行者の問題解決能力を高める。
  • ケースマネージメント・プロセスの再利用とタイムリーな変更を可能にし、プロセスをより規範的で繰り返し可能な定型業務プロセスに発展させる。
  • 適切な記録が確実に維持される手段を提供する。
  • 適切な行動をよりタイムリーに発動できる。
  • アドホックな(一時しのぎの)プロセスの適切な個所に会社で定められた規則やポリシーを組み込むことを可能にする。
  • ケースマネージメント機能を含むビジネスプロセスモデルの交換を可能にする。

ベンダー製品の多くはそれぞれ独自の方法でこれらのニーズに取り組んでいる。しかし、各社固有のケースマネージメント機能が、標準不在のままBPMNプロセスモデルに取り込まれる限り、そのモデルはツール間で交換できず、ユーザーは複数のグラフィック・プレゼンテーションに向き合い、モデリングツールやビジネスプロセス・ランタイムエンジンの選択が制限されることになる。このRFPは、これらの相互運用性の課題解決を対象とすることにある。

この記述から、ケースマネージメントの基本概念は、「ナレッジワーカーの問題解決ケース(事例)を記録し、新たな問題解決に示唆を与え、より適切な行動に導くPDCAサイクルの実現」と定義できる。ケースマネージメントについては論議が始まったばかりで、未だ明確な定義は存在しない。今後はこの分野の標準化が進展することで合意形成が行われるだろう。

あのKeith Swenson氏が自著「Adaptive Case Management」のPRのために急遽来日

2010年6月24日 4件のコメント

以前、当プログで「富士通Interstage BPM StudioのBPMNサポートとXPDLを活用したBPMNビジネスプロセスモデル相互交換」と題し紹介した記事でFujitsu AmericaのKeith Swenson氏(http://kswenson.wordpress.com)を紹介した。彼は現在、これまでのBPM技術では難しいUnstructure Process (事前定義できないビジネスプロセス)のBPM適用について製品開発・マーケッティングの両面で活躍しており、富士通Interstage BPM製品に自身の考え方をナレッジワーカー向けのダイナミックBPMと呼ぶソリューションとして具現化している。

今回、自身の考えをMastering the Unpredictable with Adaptive Case Management (私勝手な日本語訳:「ケースマネージメントで予測できない事態を克服する」)という本にまとめたので、来日の折り日本の方々に紹介したとの連絡があった。来週の金曜と差し迫ったスケジュールですが、ケースマネージメントについて知りたい方は是非エントリーください。

スケジュール:

日時:2010年7月2日 9:3011:30
参加料: 無料

定員:35 人(先着順のため早めのエントリーを!)
会場:イタリアンバール Befana – 新横浜 (神奈川県 横浜市港北区 新横浜1-4-8)

参加申し込み: “Mastering the Unpredictable” presentation by Keith Swensonさん (BPMinna) : ATND

「場所はイタリアンレストランなので、よろしければプレゼンの後に一緒にランチを食べましょう。」とのこと。

ケースマネージメントとは?

ケースマネージメントは、業界では未だ明確な定義がされていない状況で、一般的には次のような言い方で呼ばれている。最近、BPMツールベンダーも「CASE MANAGEMENT」のサポートを次世代BPMの機能要件として言い始めている。

  1. Case Management  (ケースマネージメント)
  2. Dynamic BPM (動的プロセス)
  3. Unpredictable Process Support  (予測不能なプロセスのサポート)
  4. Impromptu Process Support  (即興的、場当たり的プロセスのサポート)
  5. ガートナーの定義 “Unstructured BPM”  (非構造のBPM)

分かりやく言えば、下図③のように事前に形式化(画一的に定義)できない不安定なビジネスプロセスを取り扱い、事案(ケース)の解決実行記録(どんな命題を、どんな人が、どんな方法で、どのくらいの時間で解決したか)をナレッジとして蓄積し、新たな事案対応をより円滑に行う仕組みである。製品開発、研究活動、事故対応など事案ごとに問題解決プロセスが異なり、プロセスが変化する業務に必要な仕組みで、ナレッジワーカーの創造的活動はこの領域に該当する。

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カテゴリー:プロセスモデリング, BPM

米国Oracle、次世代BPMをWebcastを通じて紹介

2010年6月18日 1件のコメント

昨日の6月17日にオラクル社の製品開発Senior Vice PresidentのHasan Rizvi氏が「Introducing Next Generation Business Process Management」と題してプレゼンテーションを行った。

Webcast URL: http://oracle.com.edgesuite.net/ivt/4000/8104/9236/13072/lobby_external_flash_480x272/default.htm

英語放送を聞くのは辛いが、Oracle BPM Suite 11gの全容を知るには有効。

興味深い点は、

①ナレッジワーカーに必要なunstructured process(事前定義できないプロセス)のサポート

②User-Centric Tool: ITを知らないビジネスアナリスト、業務担当者でも操作可能なツール設計

③Social BPM、Process Space:インターネット・コラボレーション環境

コンテツは45分間と長いが最初の20分の視聴でだいたいの製品機能、コンセプトが分かる。

カテゴリー:ベンダー動向, BPM, BPMN, SOA

Oracle BPM Suite 11gR1がAmazon EC2で利用可能に!

2010年6月17日 2件のコメント

Amazon EC2のパーソナルアカウント(クレジットカード精算)があれば、on Demandで最新版Oracle BPMが利用可能になった。

ただし、Amazon EC2のPaaS使用料は有償。

詳細は→ BPM 11gR1 now available on Amazon EC2 (Oracle BPM) を参照。

クラウドBPMサービスの潮流は思いのほか早く訪れている。ハード、ソフトの投資なしに個人のアイデアひとつでWeb2.0技術を取り入れた本格的業務システムが開発できる時代が到来し、IT事業者の旧来のビジネスモデルは崩壊するだろう。

カテゴリー:ベンダー動向, BPM, BPMN, SOA

やっと出た国産BPM on demand! クエステトラBPMS SaaS版

2010年6月16日 コメントをどうぞ

本日、クエステトラからクラウドベースのBPMS新版の発売開始アナウンスがあった。

5ユーザまで無料で利用可能だそうで、スモールスタートでBPM概念を検証・導入検討する企業には朗報だ。

先週、日本BPM協会主催の「第1期SI事業者向けBPM実践ワークショップ 」でBPMの設計・開発・実行の基本的流れを理解するため、このクエステトラBPM Suite SaaS版を参加者20名の演習に使わせていただいた。ログイン・アカウントを頂いてからおおよそ3時間で演習用のビジネスプロセス図の作成、データ項目の定義、実行の検証、演習参加者のユーザー設定が完了し、on demandの素晴らしさを体感した。

クエステトラは、「人にやさしい」、「マニュアルはほとんど見なくていい」、「超簡単」など、国産ツールならではの使用感たっだ。軽量ツールではあるがBPM概念の基本をちゃんと押さえており、好印象だ。

クエステトラの利用価値のひとつに、「現場業務担当者を巻き込み、机上で設計したビジネスプロセスを現場業務の流れに沿って、各役割担当者が具体的なデータを操作して短時間でプロセス検証できる」点があげられる。つまり、プロセス設計案を実行可能なプロセスモデルとしてビジュアルにウォークスルーできるのだ。欧米のBPMプロジェクトではプロセスのシナリオ検証手段としてこのウォークスルー手法が使われている。

ビジネスプロセス図は作成できたとしても、実行(execution)までの道のりにはデータ項目定義、ユーザーインターフェイス設計など多くの詳細設計作業が控えている。しかし、クエステトラの仕様定義要素は極めてシンプルなので、ビジネスプロセス設計案が確定してさえいれば、下図のような少ないステップで詳細設計仕様が確定できる。

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ビジネスプロセスのプロトタイピング程度なら無償で行えるので、ユーザー企業、開発パートナー双方にとってかなり魅力的だ。

BPMのオープンソースプロバイダーからクラウドソリューションベンダーに変貌するIntalio

2010年6月14日 コメントをどうぞ

Bruce Silverの2010年6月9日付BPMS Watch で、Intalio Launches Helium (インタリオが”へリューム”プロジェクトスタート)の記事があったので、さっそくサーチしてみた。

Intalioと言えば、BPMNのビジネスプロセス図からBPELを自動生成しプロセスを駆動する技術の先駆者、BPMN標準の開発発起人、オープンソースBPMSの草分けある。国内でも一部のBPEL好きのエンジニア層で人気があり、OEM契約しているベンダーもあるようだ。しかし、私はBPELで人間中心のヒューマンプロセスを駆動するのは制約が多く、彼らが製品をBPMSと呼ぶことは懐疑的だった。しかもオープンソースモデルで事業が成り立つワケがなく、このままでは必ず壁に突き当たると考えていた。

しかし、Intalioの2010年6月7日のニュースリリース、Intalio Announces First Integrated Stack for Private Cloud Computing によると、「on demand(パブリッククラウド)とon premise(プライベートクラウド)の双方をシングル・プラット・フォームアーキテクチャで!」をキャッチコピーに、これまでの事業モデルを大きく変え、BPMSのオープンソースプロバイダーからクラウドソリューションベンダーで変貌する構想のようだ。しかも、製品アーキテクチャは、これまでのBPELエンジンのほか、BPMN.2.0サポートのプロセス駆動エンジンを新たに搭載し、ビジネス・アクティビティ・モリタリング(BAM)、ビジネスルールエンジン、ヒューマンタスク・マネージャ(人の割当ルール管理)など、ヒューマンプロセスで必須な機能を追加し、充実させる計画だ(下図のLabsマークは開発中を示す)。

製品構成

SaaSはアプリケーション、PaaSは開発ツール、IaaSは運用管理用のインフラツールを示し、ランタイムとデザインタイムの両環境をクラウドベースで提供する。

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Bruce の話によれば、SaaS型BPM on-demand サービス料金は、シングルテナント利用の場合、5ユーザー以下なら無償、それを超えるユーザー数は 1ユーザ・1ヶ月あたり9ドル~99ドルだそうで、ソリューションプロバイダーには朗報だ。

Intalio|BPMのアーキテクチャ

業界でリードしているOracle BPM Suite 11gと同様にBPMN2.0エンジンとBPEL2.0エンジンのハイブリッド構成になっている。

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Native BPMN 2.0 Architecture

Intalio|BPM is architected from the ground up to take advantage of the BPMN 2.0 specification (Learn More). BPMN 2.0 is not only used for the modeling of business processes, but also for their execution, thereby eradicating the semantic gap that existed between BPMN and BPEL until now. For this purpose, Intalio|BPM is built around a next-generation process engine capable of executing BPMN 2.0 processes natively, without having to resort to any code translation.

BPMN2.0をサポートするモデリングツール

これまではBPEL駆動エンジンのため、スイムレーンをサポートできなかったが、BPMN駆動エンジンの追加によりサポートできるようになった。モデル表記はBPMN2.0準拠だ。

Intalio|BPM

機能

参照→ Features – Intalio

ロードマップ

今年の夏には次の機能を完成させ、来年春にはすべての構想を完成させる計画だ。

参照→ Roadmap – Intalio

考察

私は当ブログで、過去から一貫して「BPMSは、BPMN直接駆動型エンジンとBPEL駆動エンジンのハイブリッド型が主流になる」と述べてきた。これまでかたくなだった「BPEL信奉主義」をやめ、クラウド事業モデルに移行するIntalioの大英断は大歓迎である。

カテゴリー:ベンダー動向, BPM, BPMN