ホーム > ベンダー動向, BPM, BPMN, SOA > 見えてきたOracle BPM 11gの全貌

見えてきたOracle BPM 11gの全貌

2009年12月3日

昨年の10月1日に当ブログで「OracleのBPM戦略とロードマップ」を紹介してから1年を経過した。

米国オラクルはその後、このロードマップに従い、現バージョンのOracle BPM 10g(買収したBEA AquaLogic BPMの未改修製品)を最新のOracle SOA Suite 11g実行環境であるFusion Middleware 11gと開発環境であるJDeveloper 11gに移植/統合を行っている。戦略発表から1年を経過した今年10月のOracle Open World 2009では、Oracle BPM 11gのプレビュー版が公開されたらしい。この情報ソースはつぎのとおり。

1.「Oracle BPM 11g Preview at Oracle Open World 2009」: 概略が分かる

2.「Oracle BPM 11g Sneak Peek」: 豊富なスクリーンショットとコメントが記載され、テクニカルでかなり具体的

3.  「Oracle Open World 09: Oracle BPM 11g R1 Suite is Well Thought Through」: かなり好意的な意見

残念ながら、来年2月まではダウンロードできないそうで、Oracle BPM 11gの機能詳細を検証する手立てがない。これらのニュースとOracle BPM 10gおよびOracle SOA Suite 11gを触ってみた自己体験からテクニカルな特徴を私なりに推測したい。

1.プロセスモデリング環境

  • 見た目は10gのBPM Studioと大きな変化はないが、BPM Process ComposerというWebベースのモデリング環境に改変されインターネットを介して共有できる(10gはEclipseベースだった)。
  • アクティビティ要素のタスクタイプにビジネスルールが追加されているので計画通りBPMN2.0に対応中のようだ。
  • 10gでもBPMN1.1に対応していたが、BEA時代のベンダローカリティを排除しBPMN仕様準拠率を高めており、シンプルになっている。
  • 噂によるとBPMN2.0の仕様に基づいて他社モデリングツールとXMLでモデル交換(シリアライゼーション)が可能になるらしい。これなら書き換え激しい上流の分析モデリングはVisioで行い、モデル確定後はXMLフォーマットでBPM Process Composerに流し込み、シームレスに実装設計できるモデリング作業環境が実現するだろう。
  • 図1は営業見積承認プロセスのサンプルモデル例である。サンプルの業務シナリオはBEA時代と同じものなので何が変わったか比較しやすい。


OracleBPMcomp
 

図1.営業見積承認プロセスのサンプルモデル

2.ヒューマンタスク

  • 人のアイコンがあるBOXはヒューマンタスクを表す。このタスクの詳細定義は、役割の参加者(participants)割り当てパターンと参加者が閲覧・操作するユーザーインターフェイスである。このことはBEA時代と変わりないが、その定義画面は大きく変わり、Oracle SOA Suite 11gで既に提供しているBPELのヒューマンタスク定義とワークリストコントロール機構を共用している。
  • ユーザーインターフェイスの開発はJavaServer Faces(JSF)に100%準拠したOracle ADF(Application Development Framework)を使用しており、これも Oracle SOA Suite 11gとの共用性を考えている。
  • JSFを採用していることから、BEA時代でもサポートしていた複数画面の遷移を伴うUI定義がページフロー(図2)で可能となるだろう。

 
pageflow

図2.JSFのページフロー

3. ワークリストアプリケーション

  • BPMのオペレーション環境では、自己または所属グレープのワークリスト(あるいはタスクリスト)を閲覧・操作するワークリストアプリケーションが必要になる。Oracle BPM 11gではこのアプリケーションをOracle SOA Suite 11gで提供しているBPM ワークリストと統合し同じ操作環境を実現している(図3)。


worklist
 

図3.BPMワークリスト

4.プロセスシミュレーションと業務最適化

  • BEA時代と同じくBPMNプロセスモデルを背景にプロセスシミュレーションでの計測結果値を表示している。
  • BAMによるプロセスモニタリングの実測値も同様に表示し、業務のボトルネックを分析できるものと予想する。


sumilation

図4.プロセスシミュレーションでの計測結果表示

5. 実装、テスト、実行環境

  • BPM 11gの実行環境は、SOA Suite 11gをサポートするFusion Middleware 11gである。BPMNのプロセスモデル上に定義したヒューマンタスク、サービスタスク、ビジネスルールタスクがそれぞれヒューマンタスク・コンポーネント、BPELコンポーネント、デシジョンサービス・コンポーネントととしてESB上でBPMNコンポーネント内のワークフロー手順に従いオーケストレーションされる(図5)。
  • 当然、テスト、アドミニストレーション環境もSOA Suite 11gを同じとなる。


Tracle

図5.プロセスのトレース

6.変貌するだろうオラクル社のBPMソリューションの位置づけ

これまでオラクル社はBPMソリューションを語るとき、Oracle SOA Suiteを提案してきた。実際、SOA SuiteではBPELを使ってヒューマンワークフローサービスを実装する方法をガイドしている。しかし、この方法には次の問題があった。

  • BPELは開発言語であり、業務ユーザーの業務可視化ツールとはなり得ない。また、業務ユーザー向けにプロセスをBPMNで可視化しても、別途BPELに変換し2重管理しなければならない。
  • BPELではヒューマンプロセスで頻発する差し戻し(loop back)処理が技術的にできない(あるいは制約が多い)。
  • スイムレーン、ロールの考え方がない。

Oracle BPM 11gでは、BEA時代に培われたAqualogic BPM Suiteのワークフローエンジンを採用し、このエンジンでBPMNで定義したワークフロー手順に従いESB上で構成タスクをオーケストレーションすることで、これらの問題を解消させている。また、BPELはサービス統合のための言語に適用範囲を狭めている。

また、最新版のOracle SOA Suite 11gは、これまでSOA Suiteの中核であったBPEL Managerを一部の構成要素に降格させ、SCA(Service Component Architecture)を設計の中核に据えいる。IBMのWebsphere sMashと同様な複合機能サービスの設計/組み立て(アッセンブル)/実行をサポートするプラットフォームに変貌させている(図6)。オラクルは、SOA Suite 11gをまず完成させ、その基盤の上でBPM 11gを開発しており、この統合化手順から製品の背景にあるコンセプトが想像できる。


sca
 

図6. Oracle SOA Suite 11gのコンポジットサービス組立図(SCA図)

図6の例ではBPELプロセスからヒューマンタスクを呼び出しているが、BPM 11gを使用すればこれらのヒューマンタスクはBPMNのビジネスプロセス側に追いやら、サービス統合に専念するだろう。事実、SOA Suite 導入ユーザーでヒューマンタスクを使用している事例はあまりないらしい。

BPM 11gは今後、2010年3月ごろベータ版公開、6月ごろOMGのBPMN2.0最終採択と同期をとってリリースされるだろうと勝手に推測している。ガートナーの過去の調査によるとBPM実施ユーザー企業の85%以上がヒューマンセントリックプロセスにBPMSを適用しており、オラクルは来年後半からその要求に応えられる。そのときは、「ヒューマンセントリックプロセス管理にOracle BPM、サービス統合/管理にOracle SOA Suiteを!」と言い方が変わるのは必然的だ。

7.未だ不透明な事項

ヒューマンセントリックプロセスのBPM開発では、変化対応力を維持するためにユーザーインターフェイスの開発およびメンテナンスに関わる容易さと生産性が重要と考えている。Oracle BPM 11gではユーザーインターフェイス開発にOracle ADFを使用する。イベントドリブンでリッチなUIをユーザーに提供できる反面、開発とメンテナンスには高い技術が要求されないか不安がある。BEA時代のAqualogic BPM Suiteではビジネスユーザーの利活用を前提にウィザードを使って事前データ項目定義から簡単に画面設計できる機能を持っていた。Oracle BPM 11gでは同様のウィザードを提供するのか不透明である。

8.使う技術者の要求スキル

BPM 11gはFusion Middleware 11gを基盤としており、技術者の育成はOracle SOA Suite 11gの学習からスタートする必要がある。BPMNによるプロセスモデリングは別途、上流の業務分析/設計者を分けて育成し、彼らが設計した確定BPMNプロセスモデルから実装設計を開始すれば、SOA Suite 11gの利活用スキルで十分と思われる。逆にSOA Suiteを理解できないIT技術者、ノンIT技術者には歯が立たないだろう。

<総括>

冒頭の情報ソースに「Oracle BPM 11g R1 Suite is Well Thought Through」と書かれていたが、確かに最良の方法(過去の利用者に大きな変化を与えず、望まれるアーキテクチャに近づける)で統合化していると私も思う。かなりパワーと資金を投入した製品だ。

岩田

広告
カテゴリー:ベンダー動向, BPM, BPMN, SOA